田舎と若者

若者が都会に出て行ってしまう。

それは、全国のおよそ田舎と呼ばれる地域に共通の課題でしょう。

なぜ若者は流出するのか? それは田舎にはない何かを都会に求めているからです。
仕事を求め。遊びを求め。学びを求め。
田舎にはないと言われる何かを求め、彼らは故郷を後にします。

だから仕方ないねーというのではこのサイトの意味がありません。

田舎にとどまる若者がいます。田舎に帰ってくる若者が、田舎に移り住む若者がいます。
そこには必ず理由があるはず。

都会が大きな幹線道路なら、田舎は細い裏路地でしょうか。
便利じゃないけど、何もないわけではない。
入るのに少し勇気も要りますが、決して進入禁止の一方通行ではありません。

そういう裏路地にあるお洒落な穴場カフェ的スポットを訪ねて、
マスターの話を聞いてみようというのがこのサイトのコンセプトなんです(多分)。

 

今回紹介するのは「田舎にとどまった若者」の一人、佐野太志さんです。

 

 

プレイスペース「Like a Lightning」

篠山の観光名所、篠山城跡。

から徒歩15分の場所にその「城」はありました。

本日取材するのはLike a Lightning というお店、通称「らいらい」。

昔、アニメで「遊☆戯☆王」って流行りましたよね。
その原型でもある「Magic」など、トレーディングカードゲーム(TCG)のカード販売と、
実際にお客さん同士が対戦できるプレイスペースを運営するお店です。

TCG以外にも、各種ボードゲームも扱っていて、大人数でも遊ぶことができます。

 

狭い入口からの昇り階段って、なんかアングラ感があってちょっと怖いですね。

目指す場所は2階左手の部屋。失礼しま~す……

店内は明るくて清潔な感じです!

 

棚には様々なボードゲームやカードゲーム類がズラリと並んでいました。
筆者がわかるのは「人狼」と「カタン」位ですが、
こういうボドゲ類は箱を見ているだけでワクワクします。

 

店内は飲食自由。飲料や軽食類の販売も行っています。

 

さあ、ここのマスターはどんな人なんだろう。

 

 

佐野さんにインタビュー

「Like a Lightning」の店主、佐野太志さんにインタビューしました。

生まれも育ちも篠山という佐野さん。行政職員として4年務めたあと、
2年前にこのお店を始められたそうです。

早速お話を伺いましょう!

 

――こう言っては何ですが、篠山市はどうしたって若者の人口は少ないですよね。
都会に出ようとは思わなかったんでしょうか。

「都会に出なかったのは実利半分、ロマン半分といったところですね」

 

――実利とロマン。詳しく伺いたいです。まず、実利というのは?

「実利はやはり、田舎では初期投資やランニングコストが安く抑えられる点ですね。

結局、経費と客入りのバランスなんですが、この店の席数はマックス22人。
いくら田舎とはいえ、さすがに22人ぐらい埋まるだろうと(笑)。
自分としては、競合の多い都会で過当競争に身を投じるより良いと思いました」

 

­­――確かに、ここ篠山なら競合はほとんどゼロですね。

「競争の弊害は、この業界全体の問題でもあるんです」

 

――どういうことでしょうか。

「こういった店って都会には多いんですが、
カード販売や中古カードの転売で利益を得ていて、
プレイスペースの利用料で食っていこうという所は決して多くないんです。
カードだけ買って帰る客も実際、多い。
だからプレイスペースの環境は充実しないし、利用料金の相場はどんどん安くなってしまう。
無料という店も珍しくないです。

そういった営業形態に、私はなんというか、激しい違和感を覚えたんですよね」

 

――なるほど。確かにそれは、寂しい話ですね。

「デジタルに考えれば、カード販売なんて通販でいい。
店の価値はそこじゃなくて、スペースで人と人が対面で戦うアナログな雰囲気だと思うんです」

 

――その価値観はとても共感できます。

「競技人口が少ないのなら、増やしていけばいいと思っています。
サッカーとかならともかく、うちで扱うMagicやデュエマといったカードゲームは極論、
2人いればできる(笑)。
それを都会でないと無理だという理屈がわからないんですよ」

夕方になり、店内にはいつのまにか、対戦するお客さん達の姿。

何気ない会話をしながらカードをタップする様子はお正月のこたつ麻雀のようで、
和やかながら少しピリッとした心地良い雰囲気でした。

競争によって経営方針を左右されない田舎で、自分の望む雰囲気の「城」を作ってゆく。
それが佐野さんの言う「ロマン」なのかもしれません。

 

根本は勝つため

佐野さんのロマンに引き込まれた筆者は、こんな質問をしてみました。

 

――お店を続ける上で、やりがいのようなものはありますか?

「うーん……結局、勝つためにやってるんですよね」

 

お客さんの笑顔。とかベタなやつを期待していた筆者は一瞬、肩透かしを食らいました。

 

――勝つため?

「はい。私自身が勝つためです」

 

――……ちょっと話が見えてこないんですが。

「平たく言えば、自分自身のレベルアップのためにも、
有望な選手を周囲に増やしたいということですね」

 

聞けば佐野さんは、自身もMagicの競技者としてかなりの実力者だそう。
この週末も大会に出場するため店を臨時休業するほどの現役っぷりです。

自分の練習相手になるような強豪プレイヤーを店から育てる。

それが、店主の真の目的でした。

 

「単に楽しんでプレイする層から、勝つことを楽しむ層が徐々に育つ。
そんなピラミッドストラクチャの構築を、店の目標として密かに掲げています」

 

ただカードを触るのが楽しい「エンジョイ勢」は、競技人口の大部分を占めます。
エンジョイ勢が排除されるような店になってはならない、
それは佐野さんが最も気を遣っていることの一つでした。

でも、本気で勝負にこだわる「ガチ勢」だけが味わえる、勝利の快感があるのも事実。

佐野さんは、ガチ勢でした。

お話を聞きながら、胸に熱いものが込み上げてきました。それは、懐かしい感覚でした。

 

 

一国一城の主

佐野さんは間違いなく、一国一城の主でした。

 

郷土への愛着とか、直に必要とされる感覚とか、そういったことはおそらく本質ではありません。
佐野さんは自らの信念に基づいて、ここでしかできない戦いをするため、田舎に城を構えたのです。

ないものねだりのマリガンをせず、配られた手札で戦う覚悟とともに。

(※マリガン……カードゲームで最初の手札を引き直すことが出来るルール)

 

まとめ

田舎にとどまってプレイスペースを経営される佐野さんは、経営者として、
また競技者としてもまさに一国一城の主でした。
その口調は終始丁寧でしたが、知的な言葉の端々に確固たるプライドを感じました。

お話していて圧倒されたのですが、佐野さんは本当に語彙と知識が豊富です。
AIなど専門的な分野にも精通されており、話題は尽きることがありませんでした。

TCGやボードゲームは経験がなくて気後れするという方も、
まずは城主とお話しながら一服するために足を運んではいかがでしょうか。

忘れていた熱い気持ちを、取り戻せるかも知れません!

 

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